04.27
Wed
ドア。

自分が立っている場所から見える扉。

2つの扉。

自分の左側に、ひとつ。

その真逆の位置にひとつ。

静まり返った部屋にあるふたつの扉。

深い緑色を基調とした絨毯を部屋一杯に敷き詰めた、その部屋。

沈み込むような感覚が伝わってくるその絨毯。

周りを取り囲む部屋の壁は萌黄(もえぎ)色した壁紙で統一されている。

家具などは一切無い。

8畳ほどの広さのあるその部屋の明かりは、さほど明るくは無い。

でも暗い印象もない。

天井、それも部屋のほぼ真ん中に淡い光を放つ、暖色系の明かり。

静寂…。


その静寂の中から、かすかに音が聞こえてくる。

自分が立っている左側から。

………、音は扉の向こう。

小声で語り合うような感じ。

耳を澄まして聞いてみると、それは男女の声のようにも聞こえる。

話の内容までは聞き取れないが、何かを語り合うような感じ。

聞きようによっては、楽しそう会話するようにも、談笑するようにも聞こえるが、全く真逆の怠惰な、懺悔のような、
言い争うような感じも聞こえる。

興味本位で、その扉の方へ歩いてみる。

ぱっと見、普通の扉。木製で、等身大の、何の躊躇もなく開けれそうな扉。

持ち手は重厚な作りではあるが、何故か気軽に入れそうな感じ。

丁度、目線の先に小さなプレートがかけてある。

これも木製。

小さな文字で、

「お気軽にどうぞ。欲する欲だけ、満たせます。」

と書かれている。

ひそひそとした声はまだ聞こえている。

声が聞こえる分、幾分かは落ち着くような感じはあるが、そうでもない感じもある。

その理由は分からない………。



そのプレートのちょっと下のところに、小さな穴が開いている。

豆粒ほどの小さな穴。

覗きこめるかと、顔を近づけてみるが、その先は闇。

部屋の明かりがその穴の届くところまでは薄暗く照らしているが、その先は闇。

声はなおも続いている。


ふと、気になって、後ろを振り返る。

反対側にある扉。

鉄製で、錆びかかって、開きそうにないそのドア。

今立っているドアの前にくると、無性にその真逆にある扉が気になる。

沈み込むような感覚の絨毯の上を、一歩一歩歩いてゆく。

サクサクと絨毯がかすかな音を立てる。


真逆の位置にある扉の前。

静寂………。

扉自体、さび付いている。

しかも向こうの扉より、重そうで、頑丈な作り。

さらには、向こうの扉より小さい。

幾分かではあるが…。入るなら、頭を下げないと難しいかもしれない。

鈍い光のみを放つ、その扉。

向こうの扉と一致しているのは、目線の先にかけられたプレート、そして小さな穴。

プレートも錆びついているような汚れがつき、そこに係れた文字も判別しにくい。

「この先に希望を感じたもののみ、中へどうぞ。」

そんな風に読める。

ピンと張りつめたような緊張感に襲われる、その扉の前。


小さな穴を覗いてみる。

穴の中はやはり闇。部屋の明かりが徐々に先細り、そして闇となる。

………、ただひとつ、針孔ほどの小さな穴から弱い明かりがその先に見える。

ロウソクの揺らぎにも似た小さな明かり。


気付くと、元居た場所に立っている。

声は未だにかすかに聞こえる。

もう片方からは何も聞こえない。




あなたは、どのちらの扉を選ぶか………。

等身大の木製の扉か、小さ目の重厚で錆びのついた鉄製の扉。



comment 0 trackback 0
トラックバックURL
http://bluecallorwoman.blog.fc2.com/tb.php/259-5217998d
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
back-to-top